名古屋高等裁判所 昭和59年(う)179号 判決
本件は,被告人石川和子(以下単に「被告人」という。)が相被告人直川秀任ら多数の者と共謀のうえ,原判示の各日時場所において,競馬,競艇,競輪の各レースに関し,それぞれ申込金を一口100円とし各レースの勝者番号を予想指定させ,右予想が的中したときは,原判示のとおりの金員を支払い,的中しないときは,右申込金を被告人らが取得する方法で原判示の各客から合計9万6,436口,申込金額964万3,600円の申込みを受けもって勝者投票類似の行為をさせて利を図った事案であるが,被告人は山口組系山健組内石川組組長の妻であるが,同組組員である相被告人直川秀任(同被告人につき,控訴趣意書不提出により昭和59年7月13日控訴棄却)らと共謀のうえ,組織的,営業的にかつ大規模に,多数の客に勝者投票類似の行為をさせて多額の利益を図ったものであること,被告人は夫が同種事案をしたかどで,服役中であることを知りながら,本件各犯行に及んだものであって,法軽視の態度が甚だしく,被告人の刑責は軽視することができない。したがって,被告人には道路交通法違反等により3回罰金刑に処せられているほか,他に前科や処罰歴がないこと,被告人の反省態度,健康状態,生活状況,同種事案との刑の権衡など所論のうち証拠によって肯認しうる被告人のため酌むべき事情を十分斟酌しても,被告人を懲役1年4月及び罰金30万円に処した原判決の量刑は,その言渡しの時点においては相当であったと認められるから,論旨は理由がない。
しかし,当審における事実の取調べの結果によると,原判決言渡し後,被告人は更に更生の決意を新たにし,贖罪として社団法人中部善意銀行に200万円を預託したこと,被告人の長女妙(中学3年生)が腰椎椎間板障害等で入院治療中であり,被告人もまた狭心症等のため通院治療中であって,早期の社会復帰が望まれる状況にあることが認められ,これらの事情を先に述べた被告人のため酌むべき事情に加えて考察すると,原判決の量刑は現在では刑期の点で重過ぎるに至ったものと認められ,これを是正するため原判決を破棄するのが相当である。
よって,(中略)被告人を懲役1年及び罰金30万円に処し,右罰金を完納することができないときは,刑法18条により金2,000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし,主文のとおり判決する。